道具の話 ヘラ

ヘラ(漆べら)

  • 漆を桶から掬う混ぜる
  • サビを作る
  • 下地を付ける
  • 布を貼る
  • 道具を掃除する などなど

様々な工程でなくてはならない道具です。

漆ヘラ
漆ヘラ

素材はひのきが一般的だと思いますが、用途によってチシャやイチョウも使います。
サイズは長さ8〜30㎝、ヘラ先の幅は用途によって0.5〜10㎝程度、厚みは1番厚いところでも0.5㎝程度でしょうか。

ヘラの主な用途

地やサビを作るヘラ 
私は一度に大量の地・サビを作ることがないので、5㎝前後の幅にしています。
力がかかる作業なので、折れないようにあまり薄くならないようにします。
(それでも時々途中から折れてしまう時があります)

地やサビを付けるヘラ (つけべら)
付ける面積によって幅0.5㎝から5㎝くらいまであります。
さびを付ける面積や厚みに応じて、程よいしなり具合になるよう薄さを調整しています。
びっくりするほどしなるヘラを使う人がいて驚いたことがあります。

漆を定盤上で混ぜるヘラ (混ぜべら)
使う漆の量に合わせて大小使っています。
適度なしなりを持たせることで、定盤上で漆を混ぜ易くなります。

ヘラの仕立て

塗りを本格的に学び始めた時、先ずこのヘラの仕立てを教わりました。
以下、ざっくりですが仕立て方です。

材料は漆芸材料店で「ひのきのへぎ板」を購入します。

へぎ板は長さ約30㎝で幅はいろいろあります。厚み1㎝弱でしょうか。
天然木なので1枚づつにクセがあります。
なるべく木目の真っ直ぐ通った目の詰まった板を選べば仕立て易く、使い易いヘラが出来ます。

細長い三角形になるよう持ち手の方に向けて細く作ります。

1枚の板から作りたい大きさのヘラが取れるように木取り(裁ち合わせ)を考えて裁ち線を描いて切ります。
この時木目が縦に通るようにします。

粗裁ち出来たら木目を通す方向に気をつけてヘラ先に角度をつけて形を整えてます。

へぎ板は丸太を木目に沿って割ったもので、表面に凹凸があります。
多少残っていても良いのですが、厚みの調整を兼ねて鉋で削ります。
(鉋がなければサンドペーパーで削ります)
持ち手になる部分の角を面取りすると手に馴染みやすくなります。

ここで「塗師屋包丁」の出番です。

道具の話でご紹介しました、刃渡り18㎝のドス型の刃物です。
ヘラ先に向かって薄くなるように削ります。この時削るのは片面だけです。
ヘラの中間部分も好みのしなり具合になるように厚みを調整します。

最後にヘラ先の鋭角側の角を少し切り取ります。
ここが一番欠け易く、欠けた破片が漆やサビに混じるのを防ぐためです。

用途によって長さ・幅・しなり具合は違います。
私はおおまかにサイズ違いのヘラ木を用意して、都度、厚みの調整をしています。

1枚のへぎ板から仕立てるのはナタやノコギリが必要ですが、ヘラの形にカットされたヘラ木も売っています。
あとは好みのしなり具合に削るだけで使えます。その場合でも削るのは片面だけです。
お店によって「この面を削る」と書かれていたり、印がされています。

日々の手入れ

汚れを拭き取り、ヘラ先が傷んでいれば塗師屋包丁でヘラ先の痛んだ部分切り取って厚みを調整します。
紙やすりで整えるだけの時もあります。
新品のヘラは長さ30㎝程度ですが、鉛筆同様、先を削って使うので段々短くなります。
短くなったヘラは縦に分割して細いヘラに仕立て直して使っています。

分割されたヘラ


ちびたヘラも細かい作業に活躍しています。